誰かに止めてほしかった。


けれどここには、あたし達しかいなかったから。



「どうせあのホストとだってヤッてんだろうが!」


ガッ、と壁を殴る鈍い音。


その瞬間に崩れ落ち、うずくまると涙が溢れる。


声を上げて泣いたのなんか初めてで、あたしはただひたすらかぶりを振り続けていた。


呆然と立ち尽くしたままだった瑠衣は、弾かれたようにあたしを見て、反射的になのだろう、抱き締めてくれる。



「違うんだ、ごめん。」


本心ではない、けれどそれは本音。


突き放すなら最後までひどくしてほしかったのに、それが瑠衣の優しさでも弱さでもあったよね。


そしてあたしもまた、考えるより先に縋りついていた。



「百合、違うから。」


違うから、ごめん、泣くなよ。


瑠衣はそればかりを繰り返し、必死であたしを落ち着かせようとしていた。


心が千切れてしまいそうで、なのにいつも形なくぐちゃぐちゃに引き裂かれることはない。



「…ごめっ、なさい…」


ごめんなさい、ごめんなさい。


あたしもまた、そればかり繰り返していた。


傷つけるのも、傷つくのも怖かったのに、言葉にしたもの全部が互いに跳ね返ってきた。


瑠衣は少し震えた息を吐く。



「今日さ、お前誕生日じゃんか。」