辞めようと決意したはずだったのに、反面で、踏ん切りがつかない自分もいる。


真っ白い色した真綾が心底羨ましいよ。


例えばお気に入りのネックレスがあったとして、買ってすぐはピカピカと輝いているのに、年月が過ぎれば傷も出来、黒ずむ。


けれどその代わりに、自分に馴染む形になるのだ。


人は年を重ねるごとに黒く染まるし、傷つき、それが成長することの対価だと思っていた。


でも目の前で大口開けてご飯を放り込む彼女は、きっといくつになってもこうなのだと思う。


同じ形をした人間なのに、弁当箱に形容してみれば、中身は冷凍食品と手作りほどの違いだった。


あたしには誰かを愛するという気持ちが欠落しているのかもしれない。


例えば家族だったり、友達だったり、恋人だったり。



「百合りんは、きっと誰より優しいねん。」


真綾は笑う。



「誰も傷つけたくないから決めかねて、相手のことをちゃんと考えてるから自分の身動きが取れんくなるだけや。
優しい人ってな、時にがんじがらめになってしまうねんて。」


違うよ。


あたしはそんなに綺麗じゃない。



「ユリの花の名前、百合りんにピッタリやね。」


泣き出してしまいそうだった、弱いだけのあたし。


いつも顔を俯かせて歩くのは、真綾みたいな太陽が眩しすぎるから。


そしてそれ故に、瑠衣を選びきれなかったのかもしれない。


月は儚くも美しい。


けれど、いつだって太陽がなければ輝けないし、強すぎる憧れ故に、あたしは目を逸らしていたのだと思う。


それはきっと、希望の光に似ていたから。