「…そん、な…」


けれど、それが詩音さんの出した結論なのだと、彼は言う。


確かにそれなら続けさせるなんて出来ないけれど、でもそれよりずっと、病気の深刻さにショックを受けた。


あまりにも大きな衝撃に立ち尽くしていると、ジローは煙草を消し、最後の煙を吐いてあたしを見る。



「百合、頼むから力になって。」


それはつまり、この店のために残ってくれ、ということだ。


もしかしたらこのタイミングでなら辞められるかも、なんてぬるい考えは打ち砕かれる。


何よりそれは、いつ捕まるかもわからないような危ない橋を、これからも渡ってくれ、ということ。



「…何、言って…」


ひどく戸惑うあたしにジローは、懇願するような顔をした。



「百合がいなくなったら困るんだ!」


「ふざけないでよ!
アンタはただ、詩音さんのために言ってるだけじゃない!」


声を荒げると、彼はきつく唇を噛み締めた。


悔しさが滲んで堪らない。



「自分や詩音さんだってどうなるかわかんないのよ?!」


「けど、あの人が望んでるから。」


「あんたらは良いかもしれないけど、あたし達はどうなんのよ!
少しくらいこっちの意見を聞こうとか思わないわけ?!」


散々稼いでおいて、こんな状況で尻尾を巻くなんて都合の良い話なのかもしれない。


けど、ジローの盲目さには苛立ちばかりだ。


その時、後ろの扉がキィッと開いた。