どうするも何もないじゃないか。



「なぁ、俺の車すぐそこなんだけど、歩ける?」


アキトは相変わらずの心配そうな顔で聞いてきた。


瑠衣は本当に何でも良いといった様子で、こちらのやりとりを気にするでもなくさっさときびすを返してしまう。



「てゆーか別に、奢ってとか言ってないし。
それにあんたらの車に乗れとか、普通に嫌なんだけど。」


「でも俺、そのまま帰せないって。」


下心はなさそうな顔だが、それを信用するほど子供でもない。


けれども息を吐いた彼は、あたしを真っ直ぐに見据えた。



「マジ、変なことしないよ。」


ひどく真剣な瞳だった。


だから今となっては、どうしてそれに従ったのかはわからないけれど。


渋々あたしは痛む右足を引きづり、彼の後ろを続いた。



「乗って。」


路上に駐車されているのは、白い高級車。


すでに助手席では、待ちくたびれたかのような瑠衣が、やっぱり煙草を咥えていた。


アキトは運転席に乗り込み、あたしは後部座席に乗り込んだ。



「百合、だっけ。
何か食いたいもんとかある?」


ルームミラー越しに、アキトは笑いながら問うてきた。


いきなり呼び捨てにされたことには苛立ったが、何でも良いよ、とあたしは返す。


瑠衣はやっぱり助手席からあたしを一瞥したが、でも何も言わなかった。


そして車は走り出す。