ひたすら父親になるという男を避けていた。


けれど、珍しく母がご飯を食べに行こう、と言って連れ出されたのは、それから一ヶ月ほどが経った頃だったろう。


久しぶりの外食に心踊らせていると、個室の扉を開けて、ひどく驚いた。


あの男と、見知らぬ女の子。


騙された、とは思ったけれど、横の子は誰なのか。



「紹介するわね。
高岡さんの娘さんの、祥子ちゃん。」


祥子は自分よりひとつ下らしく、目が大きくて明瞭そうな顔立ちだ。


クラスにひとりはいる誰からも好かれるようなタイプで、この男の娘だとは思い難いほど品行方正。



「瑠衣の妹になるのよ。」


心のどこかで、この男に母を奪われるような気がしていた。


けれど自分に妹が出来るという事実に、図らずも、嬉しさを感じてしまった。


妹になるというその子は、はにかむように笑顔を零し、もしかしたらこの時にはもう、恋心さえ抱いていたのかもしれない。



「瑠衣くん、4人で家族になろう。」


高岡の言葉。


力強く言われた台詞に、気付けば無言で頷いていた。







今までだって、母とふたりでも立派な“家族”だったはずだ。


だから父親と妹が増えてどうなるのかなんてわからないけれど、でもふたりはそれから更に一ヶ月後、再婚した。


新居は築年数は古いけど、少し広めのアパートだった。


新しい生活と、新しい家族。


祥子はまるで仲を取り持つように、一家の中では常に笑顔でいた。


笑いが絶えないというだけで、こんなにも食卓が明るくなるのだと知ったのは、彼女のおかげだったのかもしれない。