尊敬に値するほど、それでも彼は無表情を貫いていた。


きっと腹の底ではあたしを嘲笑っているのだろうに、まだ言葉にされた方がマシだ。


だから一方的に声を荒げているかのようなあたしは、苦虫を噛み潰す。



「気分悪くなんのよね、アンタ見てると。」


どうしてそんなにも、ただ真っ直ぐにその人だけを見られるのだろう。


ジローの全てに腹が立つ。


やっぱりそれは、瑠衣と似ているからなのかもしれない。


あの人は、“アイツ”を探すためだけに、この街で生きているから。


確固たる“大切なもの”の存在がある彼らに、焦りや嫉妬心もあったのかもしれない、ただ、惨めな気分にさせられる。


何にもない空っぽなだけのあたしなんて、消えてなくなれば良いのに。



「ねぇ、ちょっと方向違うんじゃない?」


そこで初めて、景色の違いに気がついた。


いつもなら大抵、街の中にあるラブホテルに行くはずなのに、車はそこから遠ざかっているのだ。


まさか、と思った。



「VIPだから、頼んだよ。」


VIPと呼ばれる客とはつまり、クリスタルや組にとって重要な人間。


その相手をさせられる時は、決まってラブホテルではないし、もちろん現金手渡しなんかでもない。


確かに特別手当は貰えるけれど、どうしてそんな相手を回されなくてならないのか。


粗相なく、客が満足するまで、何時間でも。


それが決まりであり、つまりは売春斡旋、法律違反。


一回も百回も同じだけれど、だからこそ、あたしは瑠衣を責めることが出来ないのだ。