「俺はこの街にいなきゃいけない。」


瑠衣から吐き出された煙が、行きつく先を探すように漂っている。


それはまるで、あたし達の関係そのままみたいだ。


ジュンのことだって、きっと何か勘ぐっているだろうに、決して聞いて来ることはないのだから。



「まぁ、お前はお前で好きに生きろよ。」


一緒に生きようなんて、絶対言わない。


だからさよならと言えば、あたし達はきっと簡単に終わることが出来るはずだ。


脆くて、何の拘束力もない、ふたりの関係。


悲しいけれど、あたしはこの人にとって、長い夜を越えるための抱き枕のような存在だろう。



「何かこれじゃあ、別れ話してるっぽいね。」


付き合ってもいないのに。


だから笑って言うと、瑠衣は少し困ったように視線を外した。


テーブルの上に置かれたペットボトルのミネラルウォーターは水滴を滴らせ、それが無色透明なことが嫌になる。


来いよ、と彼は言った。



「百合。」


あぁ、抱かれるんだな。


意識の端でそんなことを思いながらも近付くあたしは、きっと馬鹿なんだと思う。


互いに埋められない孤独を抱えながら、でもここで生きていかなければならなかった。


肌を合わせることで繋がっていることを感じ、必要とされているんだと思い込むことで居場所があるように思えてくる。


たかがセックス、されどセックス。


月明かりから見放されてしまったあたし達は、このネオンの色がよく似合っていたね。