今日は珍しく客が少ないようで、ジュンも流星もいつもより卓についている時間も長く、香織も嬉しそうなご様子だ。


だから日付も変わってしまったことだし、正直もうそろそろ帰ろうかと思っていた。


そんな時、店の扉が開いた。



「ねぇ、あれって誰?」


香織が声を潜め、流星に聞いている。


けれどもあたしは、その光景が信じられなくて、ただ呆然としていた。


入ってきたのは客とは呼べないような男3人で、その中のひとりが瑠衣だったから。


無意識のうちにあたしは顔を俯かせてしまい、彼らは奥へと歩いていく。



「ちょっと、一番後ろの人、格好良くなかった?」


あたしに同意を求めてきた香織に怪訝な顔をした流星は、



「瑠衣さんは止めとけよ。」


そう言ったのだ。


嫌な予感ばかりがするのに、体が動かない。


小指の指輪はずっと冷たいはずなのに、熱さえ失っていく指先では、その温度さえもわからなかった。



「あの人、ここの元ナンバーワンだけど、今じゃ何やってんだか。」


「あぁ、聞いたことありますよ。」


横からジュンも口を挟んだ。



「18で入店半年にしてナンバーワン取ったんでしょ?
すげぇけど色枕で有名だったって。」


「そうそう。
俺、その頃は別の店だったけど、伝説だけ残してその半年後にはホスト辞めたんだよ。」


瑠衣が、元ホスト?


しかも色枕で有名で、ナンバーワンだった?


何もかもが衝撃で、だから笑うことさえ忘れていた。