「あたしさぁ、学校辞めようかなぁ、とか思ってんだけどさぁ。」


ジュンも流星もいなくなったところで、香織がグラスを傾けながらぽつりと漏らした。



「ぶっちゃけ単位危ないし。」


「辞めてどうすんのよ。
てか、大学行ってるから親が仕送りくれるわけでしょ?」


そうなんだよねぇ、なんて彼女は肩を落として見せる。


確かに学校にも馴染めず、勉強もあまりついていけないということは聞いていたけれど、でも通っていて損はない。


ただ、それはあたしが決めることではないけれど。



「あたしも百合みたくさぁ、ホテヘル一本で稼ぐのもアリかなぁ、なんて。」


酔っ払って愚痴を漏らすように、香織は舌足らずな口調で宙を仰ぐ。



「堕ちるとこまで堕ちちゃえー、みたいな?」


投げやりなだけのそんな台詞。


堕ちるところに底はないし、現状に満足しないなら、どこで何をやっても同じこと。


ただ、得た金と引き替えに、より光を失う場所でもあることは確か。


昼職に戻ることが這い上がるということに繋がるのかはわからないけれど、でもずっと難しい。


だから香織には、例え馴染めなくてもごく普通の感覚を思い出せる場所を残していてほしかった。



「簡単に決めて良いことじゃないでしょ。」


「でもうちら、ずっと稼げるわけじゃないんだよ?
年を取るごとに必要とされなくなるなら、今のうちしかないわけだし。」


悲しいけれど、香織が言うことは正しい。


若い子もあたし達の代わりもいくらでもいて、それがこの街の女の寿命。


少なくともクリスタルでは、20代前半までが限界なのだ。