逃げているだけの台詞だった。


それでも瑠衣は困ったように笑ってから、



「良いんじゃねぇの?」


大して何も考えていない様子で答える。


きっとこの人はそう言うのだとわかっていて、だから予想通りで笑った。


もちろんあたしは、そんなことを本気でするつもりはないけれど、でも瑠衣はそうしてほしかったのかもしれないと、今では思う。



「ありがとね。」


気休めなだけの台詞でも良かった。


互いの指輪同士が触れ合って、甘えるように口付けを添えて。



「つーか、一緒に暮らしてるようなもんだよな、俺ら。」


そうだね、とあたしは笑う。


けれど、寄り添い過ぎてはいけないのだと、きっと互いにわかっていたんだ。


だからあたし達は一線を引くように、どこか距離を保って生きている。


お互いのこと知ろうとしないのが、悲しいかなその証拠。



「百合。」


それは、合図。


瑠衣に押し倒されると、必要とされているのだという錯覚が起きる。


抵抗しないあたしを見た彼は、いつもどこか安堵した目をし、きっと受け入れてほしいのだと思う。


居場所が欲しかった。


儚くて、消え入りそうで、そんな瑠衣の体躯の古傷は、悲しくも存在を主張している。


より依存しているのは、一体どちらだったろう。