「確かにあの頃、家族は壊れてた。
けど、例え時間を掛けたとしても、元の形には戻せなくとも、やり直したいんだ。」


理想論だよ、そんなの。



「無理に決まってるよ。
それはアンタが望んでるだけで、あたしは死んだってあんなとこには帰らないから。」


「それでも待ってる。」


家族とは、血の繋がりとは何だろう。


体を売らなければ生きられなくて、居場所がなくて、苦しくて。


それでもこの街に縋り、自由と引き換えに得たものだと、自分に言い聞かせて必死だったのに。



「百合が帰って来るまで、ずっと待ってる。」


「帰らないって言わなかった?」


けれど、お兄ちゃんは強く言う。



「もう一度、家族に戻ろう。」


席を立ったのはあたしだった。


彼は本当に引き留めようとはせず、ひとりあたしは店を出た。


街を見渡し佇むと、ここでは自分がいかに孤独かということが身に沁みる。


知り合いだって友達だってたくさんいるはずなのに、その中のどれだけの人間が、あたしの弱さを知っているだろう。


明かりが全て消えることはない。


だからきっとあたしは、あの物置とは違う、暗くない場所を選んだのかもしれない。


お兄ちゃんの言葉が頭の中をぐるぐる回る。


けれど、やっぱり帰るほどの勇気はなくて、あたしは喧騒の中に身を紛らせた。