「ごめん、百合。」


お兄ちゃんは顔を覆った。


まるで泣いているかのように、その肩が震える。



「怖かったよな。
お兄ちゃんは何も出来なかったもんな。」


自分を責めるように、彼は唇を噛み締めた。


本当のこの人は、人一倍責任感が強く、捨て犬だって放っておけないような優しさがあるのも知っていた。


けれど、それでもあたしは過去に囚われる。



「百合が言ってることは、多分間違ってないよ。
あんな風にしておいて今更救いたいなんて言って良いはずないし、謝ることで俺自身が許されたいとも思ってたのは、本当だから。」


でも、とお兄ちゃんは言う。



「百合のことを想ってるのも本当だよ。
ずっと探してたし、助けにだってなりたいんだ。」


あたしは首を横に振った。


同じ血が繋がっているからこそ、縋れないんだ。



「母さん、体を壊してね。
百合にあんなことしたバチが当たったって自分で言うんだ。」


医者のくせに、変だろう?


そう言って、お兄ちゃんは少し赤い目であたしを見る。



「父さんだって、百合が生まれた時、待望の女の子だって喜んでた。
元気に育ってくれればそれ以上は望まないって…」


そこまで言った彼の目には、薄っすらと涙が滲んでいた。


それでも真っ直ぐに、お兄ちゃんはあたしを見据える。