自嘲気味に言ってやると、お兄ちゃんは顔を歪めて目を逸らす。



「あの物置がどんなに暗いか知ってる?
あんたら全員殺してやろうと思ってたあたしの気持ち、ホントに知ってるわけ?」


堰き止められない感情が溢れ出てくる。


お兄ちゃんだけが悪いわけでないとわかっていても、それでも目の前の対象に吐き出してしまう。



「このままじゃダメだと思ってんのはアンタだけでしょ!
あたしが何か頼んだかよ、ホントは家の恥だから仕事辞めろとか言いたいだけなんだろ!
医者だからってキリスト気取ってんのかよ!」


百合、とお兄ちゃんはあたしを制止する。


その態度にも腹が立ち、肩で息をしながらあたしは、テーブルの上に置いていた煙草の箱を投げつけた。


凶器とさえ言えないそれは、彼の肩口に当たり、床に落ちる。


白く細長い煙草が散らばった。



「百合は恥なんかじゃないよ。
大事な家族だって、俺は思ってる。」


「今すぐ消えて。」


吐き捨てたあたしにも怯まず、



「家に戻りたくないなら、お兄ちゃんと暮らそう。」


「今度はあたしをどうするつもりよ!」


また閉じ込められるかもしれない。


今度は監視されて、二度と外に出られないかもしれない。



「…アンタの顔見るだけで思い出すんだよっ…」


涙が出そうで、でも意地だけでそれを堪えた。


ただ、何もかもが怖くて、まだ殴られたりしていた方がずっとマシだったと思う。


安物のメッキは簡単に剥げ落ち、内側の傷が露呈されそうだ。