「…謝る?」


「あの頃、親の言いなりにしかなれない自分が嫌いだった。
あんな風にするのは間違ってるって思ってても、何も出来なかった。」


調子の良いことを言わないでほしい。



「アンタが謝りたいって思ってんのは、ただ罪悪感から救われたいだけでしょ?
それって結局、あたしのためじゃなく、自分のための謝罪じゃんか。」


お兄ちゃん達の何もかもに嫉妬していた。


同じ血が流れているのにこうも違ってて、目に見えて溺愛されていたから。


たったひとつでさえ、それがあたしに向けられることはなかった、あの頃。



「謝ってほしいわけじゃない。
ただ、もうあたしに関わらないでくれたらそれで良い。」


許す気はない。


ただ、謝られたって過去が消えるわけではないのだから。



「あたしが今、どんなことしてるかだって、どうせ調べてんでしょ?」


「でも大事な妹だ。」


「じゃああたしの血液全部抜き替えてよ!
血が繋がってるってだけで人生に干渉して良い権利、アンタにあんの?!」


声が荒々しくなっていく。


それでもスーツ姿のお兄ちゃんは、言葉を受け止めるような顔をする。



「百合、聞いてほしい。」


冷静に、彼はあたしの目を見据えて言う。



「辛い気持ちも、帰って来たくない気持ちもわかってる。
でも、ずっとこのままじゃダメだと思うんだ。」


何がわかるって言うのだろう。


どうして何かを変えようとするのだろう。



「後藤のモン無理やり咥えさせられてたあたしの気持ちがわかるって?」