どうしてそれに足を止め、振り返ってしまったのだろう。


目を丸くしている彼は、あたしを見てひどく驚いた顔をし、こちらに歩み寄ってくる。



「…お兄、ちゃん…」


もう30も近い、一番上の兄との再会。


思わず顔を強張らせ、足を引いてしまうが、でもお兄ちゃんはあたしの肩を鷲掴み、体を揺すった。



「お前、今までどこで何やってたんだ!
母さん達がどれだけ心配してると思ってる!」


「触らないでよ!」


「今、どこで暮らしてるんだよ!
せめて連絡先くらい…」


「やめてって言ってんでしょ!」


あの親が、あたしを心配するはずない。


第一お兄ちゃん達だって、今更こんな風に言う権利はないのだから。



「もう放っといてよ!」


「百合!」


「あの頃、あんたらは苦しんでたあたしに何かしてくれた?!
親の言いつけ通りに振る舞っといて、まだ縛り付けるつもりなの?!」


声を荒げるが、体は震え出す。


お兄ちゃんは心底辛そうな顔で、ごめん、と言った。



「ジュン、行こう!」


振り払うように唇を噛み締めて急ぎ車に乗り込むと、少し迷った顔のジュンもそれに続いた。



「良いのか?」


「良いから、早く車出してよ!」


走り出した車の中でも、震えが治まらない。


消したいはずの過去が、まるで絡まる蛇のようにあたしを捕らえたままなのだから。