到着したのは田畑の中にある民家で、絵に描いたような田舎ではないけれど、でも車がないと不便だろうな、という場所。


あたしはきょろきょろとしながら、うちの病院が見えなくてほっとしていた。


ジュンはエンジンを止めて車を降り、伸びをする。



「田んぼばっかだけどさ、春から夏に掛けての時期は、緑が風に揺れてすげぇ気持ち良いんだよね、ここ。」


「ホント好きなんだね。」


「俺、ばあちゃんっ子だから。」


知ってるよ、とあたしは返す。


ふたりの格好はこんな場所で明らかに浮いているけれど、でもジュンは気にすることもなく玄関の扉を開けた。



「ばあちゃーん!」


と、呼ぶと、出てきたのは少し腰も曲がった柔らかい顔の人だった。


年の頃は70も近いのだろうか、あたしが少し委縮して頭を下げると、微笑んで垂れる目尻は可愛いと思う。



「いらっしゃい、百合ちゃんだね。
ジュンから聞いてたけど、遠いところよく来てくれたね。」


上がって、と言われるより先に、ジュンはずけずけと中へ入って行った。


あたしも慌ててその後を追うと、おばあちゃんは嬉しそうな顔をする。



「ばあちゃん、困ってることない?
買い物行くなら俺も一緒に行くし、何でも言って!」


全てがあたたかく見えて、あたしはこんな家庭を知らないのだと思い知らされる。


ジュンが大切にしている場所だった。



「お茶でも飲むかい?」


「あ、あたし手伝います!」


思わず笑顔になってしまえば、ジュンもおばあちゃんも笑っている。


が、お客さんなんだから、と言われてしまった。


うずうずするジュンの気持ちが、何となくわかった気がするけれど。