聞くだろうか、普通、この状況で。


ベッドの枕元には、未だにサンタの格好をしたスヌーピーがいる。


わかっているのかいないのか、瑠衣はあたしを壁へと押し当て、自由を奪った。


触れた唇から、吐息が漏れる。



「百合。」


瑠衣があたしの名前を呼ぶ。


赤い糸なんて迷信を信じられるほど、あたし達は綺麗じゃなかったね。


小指は約束をするための指切りにしか活用されないと、誰かが言っていたけれど。


じゃああたし達は、何故この指に輪を嵌めたのだろう。


こんな街の中で、目に見えた確かな繋がりを求めていたんじゃないのかと、今では思うことだけど。


瑠衣はあの頃、いや、それよりずっと前から、あたしじゃない人を見ていたのにね。







暖房をつけているとはいえ、冬の夜は果てしなく寒い。


けれどもそんな中だからこそ、互いに触れた肌にぬくもりを求めた。


足から力が抜け、崩れ落ちたあたしを、瑠衣が支えるように抱き締める。


白濁とした意識の端で、ジュンがくれたスヌーピーに監視されている錯覚に陥った。


一番大切なものがわからなくて、だからひとつに絞れないあたしは、最低な女というやつだろうか。



「ねぇ、ビール飲みたい。」


アル中かよ、なんて瑠衣は言う。


この男に抱かれると、いつもあたしは酒で思考を誤魔化そうとする。


無駄なことをいくら考えたって意味はなくて、だからそんな自分が嫌いだった。