瑠衣はまるであたしの体を冷やさないようにと、後ろから抱き締めてくれる。


じゃれ合うように首筋に唇が触れ、くすぐったくて笑った。


ぬくもりと呼ぶにはあまりにも頼りない、彼の腕。


けれども他人との体温の距離が、果てしなくももどかしく感じさせられる。


今日のあたしはきっと変だ。



「百合。」


気まぐれに耳元に落とされる、あたしの名前。


大嫌いな街を眼下に、また瑠衣は、あたしの体の自由を奪う。


刹那的な快楽と痛みは交互に繰り返され、声を殺すことしか出来ない。


瑠衣はきっと、支配したいのだろう。


支配下に置いて、縛りつけていたかったのかもしれない。




この街も

あたしのことも

あの人のことも



何もかもを。




幼すぎたあの頃、あたし達はもがいていた。


こんな街に染められ、沈みゆく自分自身が救われることを願っていた。


相手の中に自分の居場所を求め、必死で孤独と闘っていたのだろうけど。




体を繋ぐということ。




そんなものに意味がないということを、あたし達は誰より知っていたはずなのにね。


けれども結局は、それ以外に方法がないこともわかっていたのだろうけど。


だから逃げたんだよね、瑠衣。