今日の練習も東雲部長は“部長”していたし“先輩”も“指揮者”もきちんとこなしていた。


にかにかと笑い、あたまを左右にフラフラと揺らしていていつもの部長は健在だった。


だけど、表向きはそんな明るくてフランクな部長だけれども。


その内側に秘めたマイナスのエネルギー、やっぱり気になるよ。


「おい、もえぎ」


私はクラリネットをしまっている間、指揮台に立ちサークル員と笑いあっている東雲部長をじっと見ていた。


そんな時、ふと、声をかけられた。


「――聖二」


「何、キョトンとしてるんだよ」


「ごめん、ぼーっとしてた……何?」


私はクラの管から、マウスピースをぽん、と抜きながら聞き返した。


「もえぎ、最近付き合い悪いぜー」


聖二はその掘り深い眉間にシワをよせて、私の肩に手を乗せ、言ってきた。


ああ、そうかもね。ごめん」


ここのところずっと、部長と一緒だったからな。


放っておけないし。


「俺、オマエがいないとつまらんよ」


「私? 私、そんなに面白いキャラかなぁ?」


そう答えると、聖二は苦笑して、


「そうじゃなくて」


と言い、私の肩から手を離した。


私は目を反らし、ちらりと部長の様子を見た。


スコアを閉じ、腕時計を見遣っていた。


――今日も、お酒に誘われるかな。


いや、誘われなくても行くよ。心配だもん。