あの光景を思い出すだけで、
涙が溢れてくる。




(今日はもう、授業には出れないな……)


私はそんなことを思いながら、
深いため息を吐いた。


こんなに泣きはらした顔を、
みんなに見せる訳にはいかない。


何より、この沈んだ気持ちのまま
授業を受けたところで、

内容が右から左へ抜けていく
ことはわかりきっていた。




(放課後、友達に鞄持ってきてもらおう)


そうすれば、クラスメートに会わずに
帰宅することができる。


こんなに無様な顔を見られることもない。


そう思った、矢先のことだった。









「やっと見つけたぞ……」




背後から掛けられた声に、
私は驚いて振り返った。




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