「くそ!
 こんな本、捨ててやる!」

僕はかっとなって言った。

「そうだ。捨てたまえ。今すぐ。
 このセクハラころりん!」

「せ、セクハラころりん、だと!?」

「ああ、そうだ。
 君は、まさに、そんな感じだ。
 さあ、早くその本を捨てるんだ。
 持っていると、ますますめる君が傷つく」

「す、捨ててやるさ!」

「何だったら、今すぐ僕が、真っ二つに破って、ゴミ箱に放り込んでやっても良い」

ナナフシが言う。

「……待って」

その時、めるが言った。

「その本、捨てちゃうなら、めるがもらってあげる。
 めるのお母さん、ボランティアで古本を集めてるんだ……」

「そうか。
 じゃあ、とりあえず、める君が引き取るという方向でいこう」

ナナフシは、僕から本を取り上げて、めるに渡した。

「ナナ君、ありがとう」

めるは、ナナフシに礼を言った。

「古本のリサイクルか。
 エコだな」

ナナフシは、にっこりと笑って言った。

「ありがとう」

めるは、もう一度ナナフシに礼を言った。


「さあ。セクハラころりんは、もう席に戻りたまえ」

ナナフシは、冷たいまなざしで僕を見つめ、言った。


僕は、何も言わずに、三人と離れた椅子に座った。



しばらくしてシバケンがA4サイズにプリントされた写真を持って、ころがり会にやってきた。


もちろんそこには、めるの家のスリッパを両手にはめている僕や、駅前でめるのあとをつけている僕が写っていた。


セクハラストーカー野郎と、トキオらに罵倒されるのも時間の問題だった。