「山田丸君！早く席について下さい」

ふいに声をかけられ、思わず、「あひゃぁ」という奇妙な声が出てしまった。


「あひゃ、あ？」

きょとんとした顔で僕を見つめるのは、ころがり会で最も美人と評判の【咲坂（さかさか）きのこ】だ。


「すっすいません。早く席につきます」


「そろそろご挨拶の時間ですから、そうして下さい」

「は、はい！」

美人に話し掛けられると必要以上に緊張してしまうのが僕の悪い癖だ。

僕は慌てて椅子に座った。

慌てすぎていて、僕が座ったのは、なんと、誰かのお膝の上だった。

冷たいはずの椅子が、ふんわりと温かく、そして柔らかい。


「きゃお！」

思わず、そんな叫び声をあげてしまった。


僕が座ったお膝は、なんと、僕の片思いの相手である【有木（あるき）める】の物だったのだ。


「ごっごめんなさい！すいません！」


謝りつつも、尻に触れる柔らかい太ももの感触に酔いしれる。