「ありがとう、」 腕をひかれながら、 うちは樋佐木君にお礼を言った。 「いや、別に。」 昇降口辺りまで来て、 やっと手を離される。 「先輩、今日はいないから、 告白される心配はないから。」 と、不意にうちが さっきからずっと心配していたことを 樋佐木君が話題に出した。 今まで無意識に入れていた 肩の力がすっ、と抜けて、 少しだけ安心した。 「でもね、」 樋佐木君はさっきと変わらず 無表情な、眠そうな顔でこう言う。 「先輩を好きにならないほうがいい。」