緩んだ口角を 戻すことのないまま見ていたうちは 背後からの人の気配に 気がつかなかった。 窓に誰かの手がおかれ、 座ったままの膠着状態を強いられる。 耳元で発せられる声は、 少し怒気を含んでいた。 「何を見ているの?」 声は護の物。 じゃあ、この手も護? 動けないので、 眼だけで状況把握。 「ねえ?」 まるでひそひそ話をするかのような 吐息の声。 すべて停止状態。 異常事態。 今までに経験したことのない感覚が 襲う。