「・・・近藤 夏紀がこのサイトを封印するだなんて意外だわ」


 黒髪に眼鏡という、地味で暗く見える、あの少女が呟いた。それはとても、大人びたものだった。


「弱い人間だから、彼氏が浮気―――いえ、ちょっと他の女子と仲良くしただけで、すぐサイトに頼って呪うと思ったのに……。まさか封印するだなんて……!」


 少女は言葉とは裏腹に、何の感情もなさそうに、無表情を浮かべながら、紅茶の入ったティーカップに口をつける。


『・・・弱い人間ですので、封印したと言っても、口先だけでしょう。きっとすぐにサイトに頼って復讐するかと……』


 頭上からよく澄んだ声が聞こえ、少女はティーカップを置いた。
 声の主を見ることなく、


「ええ、そうね。でも……色々とトラウマになったみたいよ? ・・・まぁ、あんなことでトラウマになるんなんて、弱い人間に変わりないわね」


 くすくす、と少女が笑う。
 頭上で力強く頷くのが、見なくてもわかった。


「―――次は誰が書き込みをするかしら? どんな弱い人間なのかしら……? うふふ」


 楽しみだ、というように少女は笑った。