―――キーンコーンカーンコーン。

 授業の終わりを告げるチャイムが学校中に鳴り響いた。四時限目が終わり、今から昼休みだ。

 クラスメイト達は友人と昼食をとるために、机と椅子を移動させていた。


「夏紀ー!」


 真里が椅子をガラゴロと引きずってき、ウチの正面に置いた。
 勿論ウチはいつも、真里と昼食を共にするのだ。そして誘ってもいない梓とも。


「んじゃあ、行ってくるー」


 いつものように真里は席を立つ。真里の両親は早朝から仕事のため、手作り弁当を作ってもらえず購買に買いに行っている。


「私、トイレに行ってくるねっ」


 いつのまにか、ウチの隣で座っていた梓は発言して、ようやくウチはその存在に気付く。存在感が無い奴だ。
 ウチがそんなことを思ってるとは知らない梓は、席を立って真里と一緒に教室を出た。

 教室以外の場所で昼食をとったり、真里と同じように購買に買いに行ったり、梓と同じようにトイレに行く生徒達に二人は溶け込み、すっかり消えて行った。