「調理実習か……面倒だなぁ」


 ウチは料理が苦手だ。けど、真里とだったら、嫌なことでも楽しくやることができる。……それは今までだったら、の話だけど。

 どうしても隣を見てしまう。何度見ても誰もいない。あるのは廊下のひんやりとした壁と、濁ったガラスから透けて見える中庭の景色だけだ。いつも隣で微笑んでいてくれる、親友の真里はもういない……。
 そしてもうすぐ。完全にいなくなる。真里も梓も、この世から消え去る。

 ―――本当に真里と梓を……殺しちゃって、いいの……?

 最後の自問。昨日送信してしまったから、何を考えてももう手遅れだけど。

 本当に死んでいなくなると思うと、悲しくなってくる……。ウチの親友、友達、日常。単語がぽつぽつと頭に浮かんでは消える。

 ……けど、やっぱり。裏切られたことのほうが悲しかった。ウチが谷村を殺したと言われたことのほうが……何倍も悲しかった。そんなの、真里と梓が死ぬことのほうが、断然マシ。当然のことだと自分に言い聞かせる。

 ウチが谷村を殺したなんて……誰にも言われたくない!


「――ん? ウチが、谷村を殺した……?」


 違和感を感じて足を止め、首を傾げながら斜め上を見る。

 何か、おかしいような気がする……。