「石神っ! 待ちなさいよっ!!」


「ひぇー!!」


石神が廊下まで逃げてきた。

あぁ……もぅっ!
どうしてびしっと文句を言えないの!?
やめてって言えないの!?
もしかして、石神ってヘタレ……?

亜里沙は空手のポーズをした。
そしてそのまま足があがっていき―――。
なんだか嫌な予感がした。

―――ばこっ!

鈍い音がした。それと同時に、
石神が腹部を押さえながら崩れる。
私の目の前で石神が……殴られたのだった。
勿論亜里沙に、だ。


「ごめんなさい……ごめんなさい……。
もうやめてください……!」


泣き叫ぶような石神の声……。
こんな石神は嫌だ……!
見ていたくない……。
瞬間、私の中で何かが芽生えた。


「またなんだよ……。
幸恵と莉音がいなくなってから、
もう亜里沙はやりたい放題!
見ててうざいし、鬱陶しい」


眉尻を下げ、”困った顔”している優里の
言葉なんてちゃんと聞いていなかった。
すぐに行動に移さなければ……!
それだけで頭がいっぱいだった。