次の日。私は朝から体がだるくて、2時間目が終わってすぐに保健室に向かった。

ドアを開けると、先生はいなくて、かわりに木下先輩が椅子に腰掛けていた。

直後、気配を感じた木下先輩が静かに振りかえった。

「真奈美ちゃん…?」

長い前髪の中にある目が少し大きく開く。

「堀内さん」ではなく名前で呼ばれたのが嬉しくて、少し恥ずかしくなった。

「先輩はどこか具合悪いんですか?」

とりあえず気になったので聞いてみる。すると木下先輩はうん、と疑問系に言い、首を傾げる。

「僕はただのサボりだよ」

「授業でも、ですか?大丈夫なんですか?」

「授業はいつもじゃないよ。たまにこうしたい気分になるんだ…」

少し沈黙ができて、すぐに真奈美ちゃんは、と木下先輩が口を開いた。

「朝から具合悪くて…」

「え!?なら早く休まなきゃじゃん!!」

そう言って木下先輩は立ち上がると、私の手を引いてベッドに向かった。横になった私の体に木下先輩は優しく布団を掛けてくれた。

「大丈夫?」

不安な顔をして聞いてくる。

「はい。ここまでしてもらってありがとうございます」

「お礼なんていいよ。ゆっくり休みな」

フワッと頭の上に木下先輩の手が置かれた。

「お大事に…」

頭に置かれた手は気づいたらもう無くなっていて、ベッドから離れる木下先輩の腕を私は無意識に掴んだ。