僕は夕方の山林にいた。父とよく散歩に来た山林。今も変わらず綺麗だった。すこし歩いてみることにした。
 僕の父は寡黙な人だった。だけど優しかった。過去形で父を語るのは、もうこの世にいないからだ。
 父は真面目な人で仕事も熱心だった。ただ人との付き合いが下手だった。そんな父はうつ病になり、精神病院に入院中、自殺した。
 僕は父に似ているとよく周りから言われていた。幼い頃はうれしかったが、今は複雑だ。僕も父のように、もしかすると既になっているのだろうか。