静寂が広がる。

心臓が、嫌な音を立てている。

私以外の全員が意識をなくし、床の上に蹲っている。だが、放心している場合ではない。

「エルザさん!」

私は一目散に、壇上に倒れるエルザの元へ向かった。

駆け寄って肩を抱き上げると、彼は苦しげな呻き声を上げた。どこかを怪我したか、具合は良くないようだった。

「エルザさん!しっかり!」

「…シルヴァ、ちゃん…キリュウを止めて…女神が、死んでしまう。」

「え?」

エルザは、どうにか上半身だけ起き上がると、真っ直ぐに私を見据えた。

「…良く聞いて頂戴。

殺された国長は、自分の薬屋の売り上げを伸ばす為に、この街の水に毒を混ぜていたようなの。

恐らく、貴女の腹痛の原因はそれよ。」

「…まさか、」

「そして、キリュウはそれに肩入れしていた。リフィエラはそれを知って怒り、キリュウの計画を止める為に…

入院患者の生命エネルギーを吸い取って、力を回復させようとしていたの。

だけど、キリュウはキリュウで長年の計画を成就させるために、リフィエラの生命エネルギーを必要としているわ。

だけど、今のリフィエラは原動力である女神の涙を持たず、恐らく彼女自身でも思っている以上にエネルギーを保てていない。

これ以上エネルギーを搾取されれば、彼女の命は、かなり危ないかも知れない。」

エルザは、大きく息をつくと、一息に言った。

「以上、報告終わり!早く、追って頂戴!このままじゃ、リフィエラかキリュウ、どちらかが必ず死ぬわ!」

弾かれたように立ち上がる。苦しげに崩れるエルザをひとり残し、私は2人が消えて行った暗闇へと駆け出した。

誰かが死ぬなんて、聞きたくもない!