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か…つ、こ…つ、

夕べのシルヴァよろしく、操られた様にふらふらと大樹のうろへと吸いこまれて行く大勢の女性に続いて入り込んだ大樹の内部は、狭い階段が延々と地下深くまで伸びていた。

一つ階段を降りる度、憂鬱が増して行く様だ。エルザは、不快な違和感に眉を寄せた。

地下へと近付けば近付くほど、壁の窪みに灯された灯火の数は減って行く。底無しの、暗闇。

おぉ…ん…おぉ…ん…

暗闇の奥から吹いてくる風は冷たく、耳元で嘆き声のような耳鳴りを残しては通り抜けていく。

(いやねぇ…ここ…)

仕事じゃなければ死んでも入りたくない場所だ。頭を振って鬱蒼とした思考をふり切り、下る足を早める。

(あら…?)

先ほどまで気がつかなかったが、ここに来て、不意に人の気配がした。それも大勢のだ。

エルザは先を急いだ。