「この街、ずいぶん火事が多いんですね。」
「エエ、」

火事と聞いて、彼女は顔を曇らせた。

「火は、私たちにとってとても恐ろしいものデス…。」
「…ええ、」

(そりゃ、誰だって恐ろしいでしょ。)

私は、適当に相づちをうちながら聞いていた。

すると、彼女は突拍子もない話しを切りだした。

「人間は、あの炎が恐ろしくないのですカ。」
「…は?」
「どうして、この街からいなくならないのでしょウ。」
「いや…それは、」

本当に分からない子供だ。
その瞳には、純粋な疑問の色しか浮かんでいない様に見える。

「火は、消せば済むからじゃないんですか?」
「炎は消せるから、恐ろしくないのでスか。」
「はあ…今のところ犠牲者もいないし…多分。」
「甘く見られたものデス……。」
「え?」
「イエ。」

それから無言になった彼女は、始終作った笑顔を浮かべつつ診断を終え、

「ありがとうございマシタ。本日はHannaが担当させていただきマシタ。」

部屋を後にした。

不思議な胸の騒めきが、なぜだか治まらなかった。