見渡すと、部屋は一面が木でできており、ベッドの他に小さな洗面台があるだけの、とてもシンプルな作りになっている。

「あの、失礼ですが…あなたは、」

「私はエルザ。シオナの幹部。つまりあなたの上司よ。」

「はぁ…」

シオナに幹部なんてあるのか…。正直、ちょっと驚く。

「あの、失礼ですがここはどこでしょうか。」

「ここはね、御神木の中。」
「樹齢3万2千年の樹の…中。」

「そう、この樹は、中が病院になってんの。」

エルザは、可愛らしい白いペンキで塗られたベッドの柵を撫でた。

初対面なのに、昔会ったことがあるような、安らいだ錯覚に陥る。

おかげでずいぶんと落ち着いた気持ちになることができた。

「幹部のエルザさんが、どうしてここにいらっしゃるんです。」

「私?私はね、ボスにこれを渡しに来たのよ。」

エルザは頷くと、鞄から小さな箱を取り出した。

その口振りから、ボスと言う単語が、他でもないブラッドを指していることは明らかだった。

絡み合う蔓のような、綺麗な装飾が施された小さな箱の中には、小さな宝石が入っていた。

まるで、この世のピンクと言うピンクを集めて濃縮したような、鮮やかな桃色の、滑らかな粒。

─女神の涙

エルザは、それをそう呼んだ。