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街に出てからのシルヴァは、すさまじかった。

戦車のごとく、美しいセンタービルの店から店へと駆け回り洋服や小物を漁り、
ピストルから撃ちだされた弾丸も真っ青のスピードで各店のスイーツを食べまくった。

しかし、8件目のスイーツ屋のビックアイスパフェの最後の一口を頬張り、ついにご臨終。見事に具合を悪くしたのであった。

暗転。

「うぅ…ぎぼぢわるい…」

数十分後。

シルヴァは、センター通りから少し離れた小さな公園のベンチに横たわって嘆いていた。

空一面に広がった大樹の枝の間からは、オレンジに染まった空が所々に覗いている。

ライラシティの政府は、自然と科学の共存の実現を公約に掲げていることで有名だ。

そのため、ライラシティは近代的な姿をしつつも、色々なところに清水が湧く井戸があったり、生木が生えていたりと、健康的な街に見えるのである。

シルヴァは吐き気をこらえながら少し遠くに見える高層ビル群を眺めてみた。

それらの上空にはゆらゆらと陽炎が見える。

なぜだか、胸が騒いだ。

足音が近づいて来る。

ブラッドが、近くの井戸水を汲んで帰って来た。

「遅いです…。」
「うるせぇよ。黙って水飲んでろ。」

渋々ながらも、シルヴァはブラッドが持って来た水を胃に流し込む。

じくじくとした胸焼けが一瞬心地良く冷えて、その後、なぜだか何となく不快なものが胸を塞いだ。

陽炎は、まだ街の上空にあった。

「ブラッドさん、あれ…」
「火事らしい。おい、飲んだら行くぞ。」
「ん…どこにですか?」
「病院だ、病院。」
「…ありがとうございます。」

徐々に胸焼けが増して来る。

不快に息を詰めながら、シルヴァは彼に手を引かれるままに公園を後にした。