さぁさぁ、さぁさぁ、

止まない雨はいつの間にか勢いを増し、どんよりと空一面を覆う淀んだ雲から休むことなく降注いでいた。

モノクロの世界で色を持つのは、ねとりと全身にまとわりついた赤の飛散、唯一つ。

握ったナイフと、血と、

あれは、───誰だ。

─ぃ、…さん、

彼女の微かに動く唇も、鮮やかな血の紅に縁取られていた。

無数の水溜まりを染め上げる、

血溜まり。

あぁ、俺が…



…さん

…さん

「ブラッドさん。」

呼ばれている。

ゆさゆさと揺さ振られて、目を開いた。

途端に流れ込んで来た人工の光にくらくらと目眩を覚え、思わずブラッドは大きくため息を吐き出した。額には、うっすらと脂汗が浮かんでいる。


「もうすぐ着きますよ。」

そう言って、シルヴァは向かいの席に座ると、次の瞬間には手にした雑誌に目を落としてしまった。