断末魔すら上げず、終演は、あまりにも静かに、そしてあまりにもあっけなく訪れた。

静寂。

そして、一挙に音が溢れた。

狂気から覚めた、歓喜の、声。
王と、王子が死に、解き放たれた群集の声。

どっと押し寄せる痛い程の歓喜が陽が差し始めた広場に満ちた。

私達の首を落とそうとしていた兵士までもが、鉄兜を外し、喜びに涙を流していた。

(…今度こそ、助かった……。)

おぼつかない頭で考えながら、キョロキョロと見回すと、人混みの中に見覚えのある人がいた。

私はこっそりと処刑台を降りて、少しずつ群集から離れて行く人影を追った。

背中には、まだ群集の歓喜の叫びが響いていた。

溶け始めた雪が、足に絡み付いて滑る。

足を取られながらも、私は足を止めない。

絶対文句を言ってやらなければ、よくも!!と。

私はどんどん、街の郊外に向かって歩いた。

私達が初めてこの街に降り立ったあの小高い丘の、駅の方へ。