兵士を、蹴り飛ばしてどかす。

乱れる息を整えて、立ち上がる。

「…助かった?」

ざわ…

どよめきが、起こった。

剣を弾かれたジェシカが、兵士に押さえつけられていた。

先ほどの剣は、彼女の物だったのだ。

興奮した兵士は、今にもジェシカの首を飛ばしそうだ。

「ジェシカさん!!」

私は、駆け出す。

が、

「動くな。」

腕を掴まれる。私は、ついに何人もの兵士に取り囲まれた。

「何をしている!処刑、執行だ!!」

バルベールが、怒鳴る。

「斬れ!」
「バルベール様!」

バルベールが、ジェシカが叫ぶ。刃が、空を切った。

「やめて!死んじゃだめ!!!」

(誰か……!!)

私は、群集から少し離れた路地の暗がりに、紅い瞳を、見た。

─刹那。

だぁー…ん…

銃声が、響いた。


時が止まった。

「───っ!!」

ジェシカが、叫んだ声がした。

顔を上げると、ゆっくりと人影が倒れて行くのが見えた。


ローラ王国王子、バルベールが




死んだ。