「………でも…」

シルヴァは、静かに続ける。

「王様が王子を本当に憎んでいたどうかなんて、分からないじゃないですか。…バルベール王子が王様を好きなら、どうして王様の罵倒を真に受けたんです。」

「…人の心なんて、目には見えない。だからこそ、だ。だからこそ王子は絶望した。王からの愛は、偽りの愛情だったんだ、と。」

「でも…」

「では聞くが、お前は……いや、」

目に涙を溜めて、ジェシカは、話しを遮った。

彼女はとても大人びているのに、その姿は、上手く言いたいことを伝えられなくて癇癪を起こす、子供のようだった。


「…もういい。………もう、たくさんだ。」

苦しい言葉を、噛みしめる様に。
「バルベール様が、何をした?誰かを騙したりしたか?誰かを裏切ったりしたか?」

ジェシカは、ついに腕で顔を覆った。

「あの人は愛して欲しかっただけだ!」

微かにむせぶ音が、静かにこだまする。

彼女が頭を振るたびチリ、チリと鈴のピアスは冷ややかな音で鳴いた。

シルヴァは、俯いた。

東の空が、ほんのりと明るみ初めていた。