気がつくと、いつの間にかバルベールはジェシカに馬乗りになり、彼女の首を握っていた。

「く……ぁ…」
「…何が、「逃げましょう」だ。どうせお前も、いつ私を殺そうか考えているんだろう。」
「ち……が…」
「何が違うんだ。」

獣が唸るような声。

バルベールの目は、すっかり光を失っていた。

ぐいぐいと、喉を締めあげる手にジェシカの意識は、消え失せる寸前だった。

「私の見込み違いだったな。お前も。結局、誰も信用なんてできない。…アイシェの、言う通りだ。」

「バル……さ、ま…」
「いいだろう。王になれないならそれでも。最後の見せしめに、お前を処刑してやる。」

どんな言葉も、もはや彼の心には届かない。

裏切られ、傷つけられ、彼の心は、

氷になってしまった。

(私は、それでもずっと、あなたのそばに居りました。バルベール様。)

ジェシカのその唇は言葉を紡ぐことは叶わず、愛しい主の変わり果てた姿を見たのを最後に、



彼女の意識は、白に沈んだ。