バルベールは、締め付けられるようだった重い頭が、すっ。と晴れ渡って行くのを感じた。

鬱陶しい霧が、鮮やかに消えるように。

雨が、綺麗に上がっていくように。

白い躰はしなやかに動き、バルベールの胸板にぴたりと密着する。

「可哀想なバルベール。」

キスは、止まない。

「あなたは、悪くないわ。」

ぼう。っと欲熱で霞み始めた頭に声は心地好く響く。
甘く、甘く、耳にまとわりつく。

「私だけが、あなたを楽にしてあげられる。」

もう、これ無しには生きて行けない。

甘く優しい毒。

バルベールは、アイシェが彼のシャツをくつろげ始めたのを見て彼女を優しく押しやり、その躰をベッドに落とした。

「あぁ、アイシェ…。」

バルベールはきつくアイシェを抱きしめる。

「私には、君だけだ。」

アイシェは、首元を焼く熱い吐息を感じながら、くすりと笑った。