ゴォーン、ゴォー…ン

墓場のように静かなローラ城の中に、国王の死去を告げる鐘が響いては、ぐわ…んぐわ…んと不快な余韻を残して消えて行く。

日が暮れ、早くも暗くなり始めた廊下にジェシカは松明を着けて回っていた。

冬の日暮れは、早い。

例え国王が死んだとしても、灯りは着けなければならない。

ぼうっと霞がかかった頭の中で、バルベール王子の言葉がぐるぐると回っていた。

(お前は、用無しだ。)

少しでも気を緩めたら、おかしくなってしまいそうだった。

身寄りもなく、ストリートチルドレンだった自分を拾い、成人した後には軍隊長にまでしてくれたのは、他でもない、バルベールだった。

元々、ジェシカは男も舌を巻く剣達者だったし、人柄も良かったため、隊を率いる立場になっても
さほど苦労はしなかった。

だが、少し前からバルベールの命令で、軍の主導権はローラ王国の防衛大臣にある。

今やジェシカは形だけの隊長でしかない。

(お前は、用無しだ。)

かつて、ジェシカとバルベールは恋人だった。