「この間、父が残した書斎にこっそり入ったんです。

そしたら、本の間に古い手紙が挟まっていて、そこに…バルベールへ、って書いてあったんです。

僕…父さんのこと良く覚えてないから、ブラッドさんなら何か知っているかなと思って…それで…」

珍しくうなだれている少年は、彼の父を知って、何を思うだろう。

私には分からない。

でも、お父さんの姿を少しでも知ることができたら、彼はまた少し、ほんの少し変わるだろうと思う。

私は微笑む。

「そっかそっか、じゃあ今度ブラッドのおじさんが来たら聞いてみるね。」

そう言うと、リンクはぱっと表情を輝かせた。

「ありがとう、シルヴァさん!」

零れるほどの笑顔に、笑顔で答える。

こうして、見えない明日を探しながら、知らぬ真実を探しながら、私たちは物語を紡いで行く。

歴史は、形作られて行く。

それは、皆の物語であり、私たちひとりひとりの物語。

その時、玄関の呼び鈴が鳴った。

「はぁい。」

席を立つ。

木製の可愛いドアの向こうには、誰がいるのだろう。

扉の向こう側は、見えない。

それでも、私たちは扉を開いて、大切な人を見つけるために、愛しい何かを見つけるために、生きて行く。

今日を歩んで行く。

誰だろうと思った時、扉の向こうから私を呼ぶその声が聞こえた。

それは、午後の木漏れ日の優しい光に、なんだか良く似ていた。