食い込む指に、徐々に力が籠もって行く。

女とは思えない凄まじい力で掴まれ、全身を見えない力で押さえつけられ、もはや指一本動かすことすら叶わない。

風の唸りが増した。

女神の後ろで、デダが嬉しそうに軋む。

苦しい。
痛い。
苦し、い。

「あああ、あ"、あ"、あ"、」

意識を手放すこともできずにブラッドは声を上げた。

「愚か者め。デダの餌にしてくれよう。」

首筋を鮮血が流れる。ごぼりと口から血泡が溢れる。

酸素が足りない。

汗が吹き出す。

全身にぶるぶると震えが走り、痙攣を始める。

意思をもった渦巻く黒い風に持ち上げられて両足が浮かび上がる。

死ぬ。
しぬ。

嗚呼、

シヌ。

「あ"………、」

ブラッドが命を手放しかけたその時、

「ぎゃ!」

銀色の風が、男を攫(さら)った。

ブラッドは急に、押さえ付けられていた全ての力から解放された。