表に飛び出すと、そこは地獄のような景色だった。

蹲る人。
倒れて動かない人。
泣く人。
叫ぶ人。

死んだ人。

肉を腐らす血の雨は、ますます勢いを増し、道に赤黒い川を作る。

赤く焼けた軽石が、まだ熱を持ってそこここに転がっている。

すっかり狂暴な刃物と化した生臭い風が、頬に打ち付けては鈍い痛みを与えて行く。

ブラッドは、未だに鈍痛の燻る身体を叱咤して、前に前にと足を進めた。

雨が当たる。

あと数時間もすれば、それは肉を腐らせ骨を断ち、いとも容易く彼の命を奪うだろう。

死にたくない。

そんな本能の叫びが聞こえる。だが、頬を打ち、歯を食い縛って、ブラッドは駆け出した。

びゅうびゅうと耳元で風の刃が唸りを上げる。

駆ける。

国家警察署のあたりにはまだ逃げ遅れた人がいたが、駆けるうちに人々の気配は徐々に消えて、ついには誰もいなくなった。

地に横たわるのは、無数の屍。

肉が腐れた、人間。

ブラッドは駆けた。人々の呻きとひとつになって、風になって。

そうして、見覚えのあるところに着いた。

腐臭が酷く、息をするのも辛い。

はぁ、はぁ、はぁ、

そこは、グレスト駅だった。

(あの…あなたがシオナのブラッドさんですか?)

シルヴァと出会った場所。そしてすべてが始まった場所。

ブラッドは、どうしても彼女がここに来るような気がしてならなかった。

数刻もしないうちに、風が激しく唸り出した。

それはあっという間に嵐のような突風に変わり、

そうして、巨大な竜巻から風を纏った骨の竜に姿を変えた、放たれし魂「デダ」を連れたシルヴァが現れたのだった。