肩に置かれた掌の温かさが、嫌に生々しい。

口から血泡を吐いて、呻き続ける男。ついこの間まで、自分が最も厚い信頼を持って忠誠を尽くした男。そして、血の契約で繋がれた実の兄。

ブライト。

今なら、どうして自分が父を知らなかったのか、何となく想像できる。

母は、きっとグレスト王の召使か何かだったのだ。

そして、父であるグレスト王と契ってできた自分を守るために、そっと下町に身を隠した。

そんなところだろう。

ブライト。

生まれる順番が逆だったなら、俺もこの男と同じことをしただろうか。

「…ブラッド。」

春の女神が、答えを問うている。

もしも生まれる順番が逆だったなら、俺はこの男の愛する人を殺しただろうか。

分からない。

俺は、ブライトじゃないから。

「ブラッド…答えを。」

静寂が訪れた。

口の中が、すっかり渇いてしまっていた。

「…俺は、」

喉が貼りついた。

「俺はこいつを許さない。一生。死んでも許さない。」