─シルヴァ。

「そう。シルヴァさん。兄さん、シルヴァさんは確かに私に似ているかも知れない…だけど、シルヴァさんは私じゃないの。」

「…ああ。」

返事をすると、グレイは笑った。

長い間夢見続けて来た、それは、愛する妹の憎しみのない温かな微笑みだった。

「でも、兄さんの大切な部下…なんでしょう?」

だから、兄さんお願い。
シルヴァさんを救ってあげて。

ぐん、

急に、後方から体が強い力で引っ張られ始める。

川の流れに紛れてしまったかのように、その力には抗うことすら叶わない。

じりじりと、繋いでいた手と手が離れて行く。

「グレイー!」

兄さんが「生きる」ことが、私もおんなじように嬉しいんだよ。

触れているはずなのに、その姿は遠く遠くなって行く。

グレイは、笑った。

「兄さんの命が終わってこっちに来るまで、ちょっとの間だけ、お別れね。

それじゃあ兄さん、一生懸命生きて、」

行ってらっしゃい!

白く輝きながら膨らんで行く光に、グレイの姿は呑み込まれた。

後ろから引っ張る力はまだ止まない。

びゅんびゅんと風を切って流され、飛ばされて行く。

長い長いトンネルを引き戻されるように、意識は移動を続け、限界まで現実に近づくと、

一気に、

浮上した。