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調査活動。
王との面会。

つまりはあれだ。

えーと…事情聴取!

うん、そうだ。

当然のことじゃない。

私は、警察なんだから。

改めてそう確認して、私は高くそびえるローラ城を見上げた。

想像していたのよりさほど大きくはないが、石を高く積み上げて作られた堅牢なそれは、

陰鬱な曇り空の色に相まって、城と言うよりも、それ全体が巨大な牢のような印象を受ける。

寒さで、すっかり言うことをきかなくなった体はガタガタと震える。

夜が近づく時間帯。

吐く息は、一瞬で凍りつく。

歩みを進めると、厳しく城の入り口を守る門番が、不審そうに私を見た。

私は、ポシェットから警察手帳を出した。

シオナの肩書きが、一体どれ程の効果を持つかは知らないけど……

「グレスト国家警察支部、シオナの者です。国王と面会させて下さい。」

国家警察を強調してみたけど、やはりだめそうだ。

屈強だが頭が悪そうな兵士2人は顔を見合わせて、さっぱり訳が分からないと言った様子。

「国王との面会許可は申請したのか?」

…していない。

兵士は、わざとらしく肩をすくめた。

「なら、だめだな。シオナだかなんだか知らねぇが…。」

2人は、また顔を見合わせて下劣に笑った。

「国家警察なんですよ!」

「いいから帰んな、お嬢ちゃん。」

(あぁ、私って……)

本当に役立たずだ。

ブラッドが何一つ教えてくれないとはいえ、私1人では本当に何もできない。

情けない。

穴があったら入りたいとはこの事だ。

「ほら、とっとと行きな…」

兵士がニヤニヤと私を急き立てた…その時である。

「国王陛下、崩御!!」

城の中から叫び声が轟いた。

ローラ国王の死去を知らせるその声に、2人の顔は一気に青ざめた。

「陛下が、亡くなった…だと…」

「あの殺人王子が王になるのかよ!?」

「終わりじゃねえか、この国は!」

「冗談じゃねぇ、こんな国出て行くぜ、俺は!」

てんで会話にならない会話を繰り返しながら、兵士は慌てふためいて城の中へと駆けて行く。

城へ開かれた大きな扉を、開け放したまま。

私は1人、ぽつねんと取り残された。

ゆっくりと、日が、落ちた。

ドアは、開いている。

─ちょっとは仕事できますってとこ、見せてみろ。

ブラッドの声が浮かぶ。

(言われなくても……。)

「…見せてやろうじゃん。」

シルヴァは小さく呟くと、悲しげに死去を知らせる鐘が鳴り響く城の灯りに紛れ、

そして………消えた。