「済まなかった…本当に…本当に…」

悲しみの重さに耐え切れず、躰はいとも簡単に地面に崩れ落ちる。

「…兄さん。」

「あの時…お前が…ナイフを持って俺を見た瞬間、頭が…真っ白になった…気が付いたら俺の手にはナイフがあって、グレイ、お前は…お前、は、」

「兄さん。」

両の頬を、華奢な手で優しく包まれた。

「…もう、良いんだよ。あの恐ろしい日は、もう終わったの。…ブラッド兄さん。」

もう、苦しまなくて良いんだよ。

抱きしめられて、馬鹿みたいに泣けた。

泣いて、
泣いて。

そうして、また泣いた。

苦しい。
そう、ずっとずっと
苦しかったんだ。

「ありがとう。兄さんはずっと私の為に祈ってくれた。苦しんでくれた。だから…私にはもう何の苦しみもないよ。」

でもね。

兄さんにはまだ、やることがあるでしょ?

急に、世界が光を帯びる。みるみる間に空気が彩られて輪郭を持って行く。

「ほら…見て。」