神秘的な光が静まると、女を吊していた枷が外れ、その身体が、柔らかな羽が舞落ちるように、冷たい床に横たわった。

静寂───

ドクドクと脈打つ己の心臓の音だけが聞こえる。

女は、ゆっくりと顔を上げ、こちらを見た。

銀色の、瞳。

「…兄さん?」

─!

「ブラッド兄さん…?」

「─グレイっ!!」

無我夢中で走り寄り、その細く柔らかい身体を掻き抱いた。

氷のように冷え切った体温が、狂おしいほど愛おしかった。

「グレイ、グレイ…っ、」

「兄さん…」

話したいことが山ほどあるのに、言葉は何ひとつ、出ては来なかった。

それでも、初め驚いて戸惑っていた妹は、腕の中でようやく嬉しそうに小さく笑った。

「ふふ…




……馬鹿みたい。」

ずん。と、腹を突かれた。

「ぁ?」

てらてらと真っ赤な血が滴る。

シルバーの、ナイフ。

「ぐ…あぁ、あああ!!」

鈍痛にも似た、激痛、激痛激痛。

ビュッ、

銀色の刃が空を切る。

グレイ?
いや、

「シル、ヴァ…?」

視界が、真っ赤、に、染ま、た。